きす・む 【蔵む】 （動マ四） しまいかくす。「頂(イナダキ)に―・める玉は二つ無し/万葉 412」

くら [2] 【蔵・倉・庫】 （１）家財や商品などを火災や盗難などから守り，保管しておく建物。倉庫。 （２）「お蔵(クラ){（２）}」に同じ。

――が建・つ （成功して）大金持ちになることのたとえ。

くら-あずかり ―アヅカリ [3] 【蔵預かり】 倉庫に入れてあずかること。また，その番人。

くらあずかり-きって ―アヅカリ― [7] 【蔵預かり切手】 江戸時代，各藩が米や砂糖など蔵預かりしていたものに対して振り出した倉荷証券。

くら-いしょう ―イシヤウ [3] 【蔵衣装・蔵衣裳】 （１）江戸時代，歌舞伎で興行主が下級俳優に貸与した衣装。 （２）他人の衣装を借りて着ること。また，その衣装。

くら-いり [0][4] 【蔵入り】 （１）蔵の中に納めること。 （２）芝居などで，興行の純利益。 （３）江戸時代，領地の年貢米の納入。 （４）「蔵入り地」に同じ。

くらいり-ち 【蔵入り地】 中世末から江戸時代，幕府・大名の直轄領。お蔵入り。御料所。台所入り。

くら-いれ [0][4] 【蔵入れ・庫入れ】 （名）スル （１）蔵に入れ納めること。 （２）貨物を普通倉庫または保税倉庫に委託し，保管させること。 ⇔蔵出し

くらうち 【蔵内】 姓氏の一。

くらうち-かずた 【蔵内数太】 (1896-1988) 社会学者。岡山県生まれ。九大・阪大教授。東洋思想や日本文化の伝統を社会学に包摂しようと試みた。著「文化社会学」など。

くら-うつし [3] 【蔵移し・庫移し】 蔵入れした貨物を，蔵出しせずに他の倉庫に保管換えすること。特に，保税倉庫にある貨物を，他の保税倉庫に保管換えすること。

くら-うど 【蔵人】 ⇒くろうど（蔵人）

くら-おとこ ―ヲトコ [3] 【蔵男・倉男】 酒蔵で酒を作る仕事をしている男。

くら-かた [0] 【倉方・蔵方】 室町時代，倉庫を管理し，金銭・穀物・器財などの出納をつかさどったもの。

くら-ざしき [3] 【蔵座敷】 蔵の中にある座敷。

くら-ざらえ ―ザラヘ [3] 【蔵浚え】 （名）スル 「蔵払(クラバラ)い」に同じ。

くら-しゅう [2][0] 【蔵衆】 「蔵法師(クラボウシ){（１）}」に同じ。

くら-だし [0] 【蔵出し・庫出し】 （名）スル （１）倉庫に保管してある物品を引き出すこと。 ⇔蔵入れ （２）製造したものを蔵から市場に出すこと。「―の酒」

くら-ちょう ―チヤウ [0] 【蔵帳】 家蔵道具，特に茶道具の目録。茶道の名家の所蔵品は名物とされる場合があった。「遠州蔵帳」「雲州蔵帳」「鴻池蔵帳」などが著名。

くら-づかさ 【蔵司】 ⇒くらのつかさ（蔵司）

くら-づくり [3] 【蔵造り】 （名）スル （１）蔵を建てること。また，その人。 （２）土蔵づくりの家。土蔵づくり。

くら-ぬし [2] 【倉主・蔵主】 倉庫の所有者。蔵の持ち主。

くら-の-つかさ 【蔵司・内蔵寮】 （１）後宮十二司の一。神璽(シンジ)・関契，天皇皇后の衣服などの管理にあたった。ぞうし。くらづかさ。《蔵司》 （２）「くらりょう（内蔵寮）」に同じ。

くらのなか 【蔵の中】 小説。宇野浩二作。1919年（大正8）「文章世界」に発表。質屋の蔵の中で，質入れした自分の着物を虫干ししながら女たちを回想する快楽を，ヒステリー女に邪魔される話。

くらはら 【蔵原】 姓氏の一。

くらはら-これひと 【蔵原惟人】 (1902-1991) 文芸評論家。東京生まれ。東京外語卒。昭和初年からマルクス主義的文芸評論家として活躍，プロレタリア文学運動の理論的指導者。評論集「芸術論」など。

くら-ばらい ―バラヒ [3] 【蔵払い】 （名）スル 在庫商品を整理するため，またはその名目で，安売りすること。くらざらえ。

くら-びらき [3] 【蔵開き】 （名）スル 年の初めに，吉日を選んでその年初めて蔵を開くこと。また，その祝い。多く正月一一日に行い，鏡餅を雑煮などにして食べた。江戸時代，大名が米蔵を開く儀式をしたのにはじまる。

くら-ぶぎょう ―ブギヤウ [3] 【倉奉行・蔵奉行】 江戸時代，幕府の職制の一。勘定奉行の配下に属し幕府の米穀の出納，米蔵の管理をつかさどった。

くら-べ 【蔵部】 律令制で，内蔵寮(クラリヨウ)や大蔵省に属し，官物の出納をつかさどった下級役人。

くら-ぼうし ―ボフシ [3] 【蔵法師】 （１）室町時代，大名などの蔵を預かって米穀の出納をつかさどった僧形の者。蔵衆。 （２）江戸時代，商家の土蔵や倉庫を預かり，管理した者。

くら-まい [0] 【蔵米】 （１）江戸時代，幕府・諸藩が倉庫に貯蔵した米。家臣の俸禄にあてた。切米(キリマイ)。 （２）江戸時代，幕府・諸大名が蔵屋敷を通して貨幣にかえた貢租米。

くらまい-きって [5] 【蔵米切手】 「指し紙{（３）}」に同じ。

くらまい-ちぎょう ―ギヤウ 【蔵米知行】 江戸時代，幕臣や藩士に知行を土地ではなく米で与えること。多くの藩では一七世紀に地方(ジカタ)知行制から切り換えられた。 →地方(ジカタ)知行制

くらまい-とり 【蔵米取】 江戸時代，知行地でなく蔵米を給与された幕臣や藩士。初め下級者であったが，知行制の改定の結果多くの藩では上級者にまで及んだ。切米取(キリマイトリ)。 ⇔地方取(ジカタドリ) →知行取

くらまえ クラマヘ 【蔵前】 東京都台東区浅草，隅田川の西岸の地名。江戸時代，幕府の米倉があり，札差(フダサシ)が多く住んでいた。

くらまえ-にゅうよう クラマヘニフ― 【蔵前入用】 江戸時代，高掛物(タカガカリモノ)とよばれた付加税の一。天領の農民に課せられた。

くらまえ-ふう クラマヘ― [0] 【蔵前風】 （１）江戸時代の浅草蔵前の豪奢な札差(フダサシ)の風俗。 （２）〔蔵前の札差の女房の好みの結い方であったことから〕 のめし髷(マゲ)の異名。

くら-まわり ―マハリ 【蔵回り】 〔「蔵」は質屋の意〕 近世，質流れの古着や古道具を売買して歩く商人。ふるてがい。

くら-みせ [0] 【蔵店】 土蔵造りの店。

くら-もち [4] 【倉持(ち)・蔵持(ち)】 （１）倉庫を所有すること。また，持ち主。 （２）金持ち。財産家。

くら-もと [0] 【蔵元・倉本】 （１）酒・醤油などの醸造元。造り酒屋。 （２）荘園の年貢を収める倉庫を管理する者。 （３）室町時代，質屋を営んだ者。 （４）江戸時代，大坂などにおかれた蔵屋敷に出入りし，蔵物の出納をつかさどった商人。掛け屋を兼ねる者も多かった。

くら-もの 【蔵物】 江戸時代，諸藩が江戸や大坂の蔵屋敷に送って売り払う物産。 →納屋(ナヤ)物

くら-やくにん [3] 【蔵役人】 蔵屋敷に勤めて蔵米・蔵物の出納をつかさどる各藩の役人。

くら-やしき [3] 【蔵屋敷】 江戸時代，諸大名が年貢米や特産物を売りさばくために江戸・大坂・大津などに設けた，倉庫と取引所を兼ねた屋敷。特に，大坂に集中した。

くら-やど 【蔵宿】 （１）料金を取って品物を保管しておく所。 （２）江戸浅草蔵前に住んだ札差(フダサシ)。また，その店舗。 （３）大坂の納め宿の別名。

くらやど-し 【蔵宿師】 江戸時代，旗本や武士などの依頼を受けて，蔵宿{（２）}と借金の交渉を行うことを業とした者。弁舌・気力にたけた浪人などがなり，蔵宿側は折衝役をおいてこれに対抗した。

くらんど 【蔵人】 ⇒くろうど（蔵人）(１)

くろうど クラウド [2] 【蔵人】 〔「くらひと」の転〕 （１）蔵人所の役人で，機密の文書・訴訟をつかさどった令外(リヨウゲ)の官。のちには，天皇の衣食・起居のことから伝宣・進奏・諸儀式，その他宮中のいっさいのことを扱った。院・摂家にも置かれた。くらんど。くらうど。 （２）宮中の雑事に奉仕する女官。女蔵人(ニヨクロウド)。

くろうど-どころ クラウド― [5] 【蔵人所】 810年，嵯峨天皇によって設置された令外の官司の蔵人が事務を執る役所。職員として別当・頭・五位蔵人・六位蔵人・出納・雑色などが置かれた。

くろうど-どころ-の-べっとう クラウド―ベツタウ 【蔵人所別当】 蔵人所の長官。左・右大臣または大納言が任ぜられた。殿上の別当。

くろうど-の-ごい クラウド―ゴ 【蔵人の五位】 六位の蔵人のうち任期が満ちて五位に叙せられ，欠員がなくて殿上を下りたもの。

くろうど-の-とう クラウド― 【蔵人頭】 蔵人所の別当に次ぐ職。定員は二名で，一人は弁官から，一人は近衛中将から任じ，それぞれ頭弁・頭中将といい，殿上の大小の事務をつかさどった。

くろうど-の-べん クラウド― 【蔵人弁】 蔵人で太政官の弁官を兼ねた者。

くろうど-まち クラウド― 【蔵人町】 蔵人の詰所。校書(キヨウシヨ)殿の西，後涼殿の南にあった。

ざおう ザワウ 【蔵王】 （１）「蔵王山」の略。 （２）「蔵王権現」の略。

ざおう-こくていこうえん ザワウ―コウン 【蔵王国定公園】 宮城・山形両県の県境，蔵王山を中心とする国定公園。火山景観・温泉・スキー場などで知られる。

ざおう-ごんげん ザワウ― 【蔵王権現】 釈迦如来の化身といわれ修験道の本尊。役行者(エンノギヨウジヤ)が金峰山(キンプセン)で修行中に感得したとされる。像は三目の忿怒身で，右手に三鈷(サンコ)を握って振り上げ左手は腰にあて片足を高くあげた姿をとる。金剛蔵王。蔵王菩薩。 蔵王権現 [図]

ざおう-ざん ザワウ― 【蔵王山】 宮城・山形両県にまたがる火山群。屏風岳を中心とする南蔵王と，最高峰熊野岳（1841メートル）・刈田岳を外輪山とし，五色岳を中央火口岳とする北蔵王からなる。樹氷で有名。

ざおう-どう ザワウダウ 【蔵王堂】 奈良県吉野山にある金峰山(キンプセン)寺の本堂。蔵王権現をまつる。現存の堂は1456年の再建。

しまい-なく・す シマヒ― [5] 【蔵い無くす】 （動サ五） しまった物の所在がわからなくなって無くす。「印鑑を―・す」

しまい-わす・れる シマヒ― [6] 【蔵い忘れる】 （動ラ下一） （１）出した物をしまうことを忘れる。「財布を―・れる」 （２）物をしまった場所を忘れる。

し-ま・う ―マフ [0] 【仕舞う・終う・了う・蔵う】 （動ワ五［ハ四］） （１）（仕事などを）し終える。終わりまですませる。また，仕事が終わる。「店を―・う」「仕事が早く―・ったら寄ってみよう」「食事を―・つて茶を飲みながら/青年（鴎外）」 （２）使っていたもの，外に出ているものなどを納めるべき場所に納める。片付ける。また，適当な所に入れる。「おもちゃを―・う」「財布を懐に―・う」「秘密を胸に―・っておけない性質」 （３）解決する。けりをつける。（ア）（あったものを）なくする。「これを―・つたら盗賊よけの守りを引つ放しておかう/黄表紙・金生木」（イ）盆・暮れなどに取引を清算する。「まだ得―・はぬかして取乱したる書出し千束の如し/浮世草子・胸算用 2」（ウ）殺してけりをつける。「これへ呼び出せ，―・うてくれん/浄瑠璃・忠臣蔵」（エ）遊里で，遊女を買い切る約束などをして，ほかの客の所へ出さない。「今夜あ―・つて居て呼びにやるべえと思つた所い来さつた/洒落本・道中粋語録」 （４）（補助動詞） 動詞の連用形に助詞「て（で）」を添えた形に付いて，その動作がすっかり終わる，その状態が完成することを表す。終わったことを強調したり，不本意である，困ったことになった，などの気持ちを添えたりすることもある。「忘れて―・うに限る」「寝過ごして―・った」「すっかりお手数をかけて―・いました」「見られて―・った」「指を挟んで―・った」 [可能] しまえる

ぞう ザウ [1] 【蔵】 所有していること。「さる旧家の―にかかる名品」

ぞう-きょう ザウケウ [0][1] 【蔵教】 〔仏〕 天台教学で釈迦一代の教説を内容的に分類した化法(ケホウ)の四教の第一で，三蔵教の略称。仏教教義の初歩として説かれた小乗教。 →五時八教

ぞう-きょう ザウキヤウ [0] 【蔵経】 「大蔵経」の略。

ぞうきょう-し ザウキヤウ― [3] 【蔵経紙】 中国で，宋代に大蔵経の印刷に用いた紙。麻紙という。また，のちに乾隆帝の時代にこれを模して作った写経用の紙。

ぞうぎょくわかしゅう ザウギヨクワカシフ 【蔵玉和歌集】 室町時代の歌集。一巻。草木鳥月の異名などを詠み込んだ和歌を類聚(ルイジユ)し，簡単な注を施す。蔵玉集。

ぞうこつ-き ザウコツ― [4][3] 【蔵骨器】 火葬した骨灰や副葬品を納める容器。骨蔵器。

ぞうし ザウシ 【蔵志】 日本最初の解剖書。山脇東洋著。1759年刊。54年に初めて官許を得て行なった解剖の所見を記述。古来の迷妄を正し，実際の解剖の必要性を認識させた。

ぞう-しょ ザウ― [0][1] 【蔵書】 書物を所蔵していること。また，その書物。蔵本。

ぞうしょ-いん ザウ― [3] 【蔵書印】 その所蔵者を明らかにするために書籍に押した印。

ぞうしょ-か ザウ― [0] 【蔵書家】 書物をたくさん所有している人。

ぞうしょ-ひょう ザウ―ヘウ [0] 【蔵書票】 ⇒エクス-リブリス

ぞう-しょう ザウシヤウ [0] 【蔵相】 大蔵大臣のこと。

ぞう-す ザウ― [1] 【蔵主】 禅寺で，経蔵をつかさどる僧の役職名。蔵司。

ぞう-す ザウ― [1] 【蔵司】 （１）蔵主(ゾウス)の居室。 （２）「蔵主」に同じ。

ぞう・する ザウ― [3] 【蔵する】 （動サ変）[文]サ変 ざう・す （１）所蔵する。「多くの古書を―・する」 （２）中に含みもっている。「複雑な問題を―・している」

ぞうせい-き ザウセイ― [3] 【造精器・蔵精器】 車軸藻類・コケ植物・シダ植物の雄性生殖器官。精子をつくる。 →造卵器

ぞう-ち ザウ― [1] 【蔵置】 （名）スル 倉庫などに物をしまっておくこと。

ぞう-とく ザウ― [0] 【蔵匿】 （名）スル （１）人に見つからないように隠しておくこと。「これを樹籬の中に―せんが為めならず/西国立志編（正直）」 （２）〔法〕 罰金以上の刑にあたる罪を犯した者，または拘禁中逃走した者などをかくまう行為。 →犯人蔵匿罪

ぞう-はん ザウ― [0] 【蔵版】 版木や紙型を所蔵していること。また，所蔵の版木や紙型。「大蔵省―」

ぞう-ふく ザウ― [0] 【蔵幅】 所蔵する掛物。

ぞう-ほう ザウ― [0] 【蔵鋒】 書道で，筆法の一。起筆に筆の穂先を筆画の外に表さないように書くもの。篆(テン)書・隷(レイ)書に用いる。 ⇔露鋒

ぞう-ほん ザウ― [0] 【蔵本】 所蔵する書物。蔵書。

ぞう-めん ザウ― [0] 【蔵面・造面】 舞楽面の一。長方形の厚紙に白絹を張り，墨で抽象化した眉・目・鼻・口を描く。蘇利古(ソリコ)・安摩(アマ)の二種がある。雑面。 蔵面 [図]

ぞう-もつ ザウ― [0] 【蔵物】 所蔵している物品。ぞうぶつ。

ぞうらん-き ザウラン― [3] 【造卵器・蔵卵器】 車軸藻類・コケ植物・シダ植物の雌性生殖器官。膨らんだ腹部と細い頸部とからなり，腹部に一個の卵細胞を生じる。 →造精器

ぞう-ろく ザウ― [0] 【蔵六】 〔頭・尾・四足の六つを隠すことから〕 亀の異名。

ぞうろく ザウロク 【蔵六】 (1822-1877) 江戸末期・明治初期の陶工。姓は真清水。京都の人。五条坂に開窯して主に青磁を焼き，古染付(コソメツケ)・高麗(コウライ)などの写しをよくした。

くらざらえ【蔵浚え】 a clearance sale.

ぞう【蔵】 property.→英和 …蔵(の) in the possession of….

ぞうしょ【蔵書】 a collection of books;one's library.2万の〜がある have a library of 20,000 books.‖蔵書印 the owner's signet.蔵書家 a book collector;a bibliophile.蔵書票 a bookplate;an ex libris.蔵書目録 a library catalog.

ぞうしょう【蔵相】 the Minister of Finance.

ぞうほん【蔵本】 one's books[library].