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かけ【掛け・懸け】🔗⭐🔉
かけ【掛け・懸け】
[一]〔名〕
①言葉に出して言うこと。また、その言葉。万葉集10「子らが名の―によろしき朝妻の」
②(身に)かけるもの。うちかけ。浮世風呂3「時々の―を召して」
③帯の、しめはじめる方の端。
④「かけそば」「かけうどん」の略。
⑤相撲で、相手の足に自分の片足をかけて倒すわざ。内掛け・外掛け・切返しなど。
⑥卸値の定価に対する割合。→がけ(掛)3。
⑦即金でなく、後日清算する約束でする売買。また、売掛金。「―で買う」「―がたまる」
⑧計略。手くだ。ひとりね「うそ也。―也。初心者くふ事也」
[二]〔接尾〕
①肩にになうだけの数量を表す。荷か。宇津保物語国譲下「御衣櫃一―、長櫃一―持たせ給ふ」
②動詞の連用形に添えて、動作の中途である意を表す。「読み―」「やり―」→がけ(掛)2。
③名詞に添えて、それをかけておく物の意を表す。「洋服―」「手拭―」
⇒掛けも構いもなし
がけ【掛け】🔗⭐🔉
がけ【掛け】
〔接尾〕
①体につける物に添えて、身につけたままの意を表す。「ゆかた―」「わらじ―」
②動詞の連用形に添えて、ついで、途中の意を表す。狂言、腰祈「もどり―に都へ参つて」。「帰り―」
③漢語の数詞に添えて、割合・歩合を表す。「定価の七―」
④和語の数詞に添えて、倍数を表す。「三つ―」
⑤人数に添えて、その数だけ腰かけられることを表す。「3人―のいす」
かけ‐あ・う【掛け合う】‥アフ🔗⭐🔉
かけ‐あ・う【掛け合う】‥アフ
〔自五〕
①つりあう。照応する。連理秘抄「すべてこの句に―・ひたる秀逸は」
②交渉する。談判する。「役員に―・う」
③(他動詞として)互いに掛ける。「声を―・う」
かけ‐あきない【掛け商い】‥アキナヒ🔗⭐🔉
かけ‐あきない【掛け商い】‥アキナヒ
掛売りでする商売。↔現金商い
かけ‐あつめ【掛け集め】🔗⭐🔉
かけ‐あつめ【掛け集め】
(→)掛取りに同じ。
かけ‐あわ・せる【掛け合わせる】‥アハセル🔗⭐🔉
かけ‐あわ・せる【掛け合わせる】‥アハセル
〔他下一〕
①これとかれとを照合する。対照させる。
②掛け算をする。
③交配する。
かけ‐か・える【掛け替える】‥カヘル🔗⭐🔉
かけ‐か・える【掛け替える】‥カヘル
〔他下一〕[文]かけか・ふ(下二)
①掛けてあったものを取って別のものを掛ける。
②掛ける場所を取り替える。別の場所に掛ける。
かけ‐かまい【掛け構い】‥カマヒ🔗⭐🔉
かけ‐かまい【掛け構い】‥カマヒ
(下に打消の語を伴う)かかりあい。関係。かけかまえ。歌舞伎、韓人漢文手管始「―のない若殿様にお住持のお情」
かけ‐がらし【掛けがらし】🔗⭐🔉
かけ‐がらし【掛けがらし】
一度塩漬にしてから干した魚。
かけ‐くら・べる【掛け比べる】🔗⭐🔉
かけ‐くら・べる【掛け比べる】
〔他下一〕
目方をくらべる。物事を比較する。〈日葡辞書〉
かけ‐ごえ【掛け声】‥ゴヱ🔗⭐🔉
かけ‐ごえ【掛け声】‥ゴヱ
①人に呼び掛ける声。特に、演劇・競技などで、ひいきの者にかける声援。「大向うから―がかかる」
②武芸・音曲などで、気勢を添えあるいは拍子をとるために発する声。「―ばかりで実行が伴わない」
③重い物を挙げたり荷車を押したりする時などに発する声。
⇒かけごえ‐だおれ【掛け声倒れ】
かけごえ‐だおれ【掛け声倒れ】‥ゴヱダフレ🔗⭐🔉
かけごえ‐だおれ【掛け声倒れ】‥ゴヱダフレ
掛け声は大きいが、事態には何の進展もないこと。気勢をあげるだけで、実行に至らないこと。「行政改革は―に終わる」
⇒かけ‐ごえ【掛け声】
かけ‐こ・む【掛け込む】🔗⭐🔉
かけ‐こ・む【掛け込む】
〔他下二〕
かぎをかけて門戸をとざす。落窪物語2「その遣り戸―・めてな入れそ」
かけ‐こも・る【掛け籠る】🔗⭐🔉
かけ‐こも・る【掛け籠る】
〔自四〕
かぎをかけて中に閉じこもる。徒然草「やがて―・らましかば、くちをしからまし」
かけ‐さか・る【掛け離る】🔗⭐🔉
かけ‐さか・る【掛け離る】
〔自四〕
かけはなれる。堀河百首雑「―・りゆらのと渡る柴船の」
かけ‐さだめ【掛け定め】🔗⭐🔉
かけ‐さだめ【掛け定め】
(島根県辺で)小作人の地主に対する、小作継続確認のための正月礼。田掛け。
かけ‐ざん【掛け算】🔗⭐🔉
かけ‐ざん【掛け算】
二つ以上の数の積を求める演算。数や式に他の数や式を掛ける計算。乗法。↔割り算
かけ‐ずて【掛け捨て】🔗⭐🔉
かけ‐ずて【掛け捨て】
(カケステとも)
①元結もとゆいなどの、掛けた後で不用となったもの。
②掛金をその期限まで続けないで、中途でやめること。
③保険で、掛金を満期まで払い込んでも、傷害や火災などに遭わなければ、掛金が戻って来ないこと。
かけ‐だ・す【掛け出す】🔗⭐🔉
かけ‐だ・す【掛け出す】
〔他五〕
①さじき・縁などを、外方へ張り出して造る。
②物を秤はかって、量目の余分が出る。日葡辞書「イチモンメ(一匁)カケダイタ」
かけ‐ちが・う【掛け違う】‥チガフ🔗⭐🔉
かけ‐ちが・う【掛け違う】‥チガフ
[一]〔自五〕
行きちがう。すれちがいになる。くいちがう。「―・って会えなかった」「両者の意見が―・う」
[二]〔他五〕
かけ誤る。かけちがえる。「ボタンを―・う」
かけ‐て【掛けて】🔗⭐🔉
かけ‐て【掛けて】
〔副〕
①心にかけて。いつも。万葉集15「まそかがみ―偲しぬへと」
②(多く、下に打消の語を伴って)少しも。決して。源氏物語夕顔「知らず顔にて―思ひ寄らぬさまに」
⇒かけて‐も【掛けても】
かけて‐も【掛けても】🔗⭐🔉
かけて‐も【掛けても】
〔副〕
少しでも。いささかも。堤中納言物語「かやうの筋は―おぼしよらぬ事にて」
⇒かけ‐て【掛けて】
かけ‐はずし【掛け外し】‥ハヅシ🔗⭐🔉
かけ‐はずし【掛け外し】‥ハヅシ
①掛けたり外したりすること。
②釣針が岩などにひっかかって取れない時、それを外すのに用いる道具。
③焼物で、釉うわぐすりをかけ残したところ。
かけ‐はず・す【掛け外す】‥ハヅス🔗⭐🔉
かけ‐はず・す【掛け外す】‥ハヅス
〔他四〕
①掛けてあるものを外す。牛につないである車を外す。保元物語「さらば安楽寿院の方へ御車を向けて、―・すべし」
②掛けそこなう。
かけ‐まく【懸けまく・掛けまく】🔗⭐🔉
かけ‐まく【懸けまく・掛けまく】
(マクは推量の助動詞ムのク語法)心にかけること。また、言葉に出して言うこと。万葉集2「―もゆゆしきかも言はまくもあやにかしこき」
かけ‐め【掛け目】🔗⭐🔉
かけ‐め【掛け目】
①秤にかけて量った重量。量目りょうめ。
②原料繭の価格をあらわす係数。一般に生糸1キログラム(もとは1貫目)を生産するのに要する原料繭価格をいう。4000掛とは生糸1キログラムを生産するのに4000円かかることを意味する。
○掛けも構いもなしかけもかまいもなし🔗⭐🔉
○掛けも構いもなしかけもかまいもなし
少しの関係もない。浄瑠璃、大経師昔暦「なんの掛も構ひもなき猫にまで渋口の」
⇒かけ【掛け・懸け】
かけ‐もたれ【掛靠れ】
相撲で、内掛けまたは外掛けで攻めながら、身体を相手にもたせこんで倒す形。
かけ‐もち【掛持ち】
二つ以上の仕事を兼ねて受け持つこと。兼務。兼任。
かけもどし‐きん【掛戻し金】
掛返し債務の掛金。
かけ‐もの【掛物】
①書画を床の間や壁などにかけるように表装し、飾りまたは鑑賞用にするもの。書のを掛字、画のを掛絵、また、書画ともに掛字という。掛軸。掛幅かけふく。
②乾菓子に砂糖を引いたもの。氷掛こおりがけの類。
⇒かけもの‐かけ【掛物掛け】
かけ‐もの【賭け物・懸け物】
勝負事に賭ける品物。懸賞の品。賭禄。源氏物語若菜下「艶なる―ども」
⇒かけもの‐じょう【懸物状】
かけもの‐かけ【掛物掛け】
軸物をかけるのに用いる、先端に叉またを付けた棒。画叉がさ。
⇒かけ‐もの【掛物】
かけもの‐じょう【懸物状】‥ジヤウ
鎌倉・室町時代、原告・被告の双方、もしくは一方が、自説の真実であることを証するため、敗訴の場合は自分の所領を相手方に渡す旨を記して官に提出した文書。賭物押書あっしょ。
⇒かけ‐もの【賭け物・懸け物】
かけ‐もよお・す【駆け催す】‥モヨホス
〔他四〕
①駆けまわってうながし立てる。
②人数などを寄せ集める。
かげ‐もん【陰紋】
輪郭だけを描いた紋。陰の線(複線)で描いた紋。
かけ‐や【掛矢】
樫などで造った大きな槌つち。杙くいを打ち込み、また、軍陣で敵の城門の扉を打ち砕くことなどに用いた。かきや。
かけ‐や【掛屋・懸屋】
江戸時代の金融業者。幕府の掛屋と諸藩の掛屋とがあった。前者は淀川治水費割賦銀の徴収を請け負った鴻池善右衛門・白山安兵衛両名。後者は諸藩の大坂蔵屋敷の蔵物売却代銀を預かり、諸藩の金融にも応じた。銀掛屋。御掛屋。→蔵元→札差
かけ‐やぶ・る【駆け破る】
〔他四〕
馬を駆け入れて敵陣を破る。
かげ‐やま【陰山】
日陰にある山。また、山の日陰になる側。
かげやま【景山】
姓氏の一つ。
⇒かげやま‐ひでこ【景山英子】
かげやま‐ひでこ【景山英子】
女性解放運動家。結婚して福田と改姓。岡山藩士の子。自由民権運動に参加し、大井憲太郎らと大阪事件に連座。のち平民社に入り、1907年(明治40)「世界婦人」を発行、女性の覚醒を促した。著「妾わらわの半生涯」。(1865〜1927)
→著作:『妾の半生涯』
⇒かげやま【景山】
かけ‐や・る【掛け破る】
〔他四〕
物にひっかけてやぶる。枕草子144「狩衣は―・りなどして」
か‐げゆ【勘解由】
勘解由使の略。
⇒かげゆ‐し【勘解由使】
かげゆ‐し【勘解由使】
平安初期以降、国司などの交替の時、後任者から前任者に交付する文書(解由)を審査した職。令外りょうげの官の一つ。
⇒か‐げゆ【勘解由】
かけ‐よ・る【駆け寄る】
〔自五〕
走って近寄る。
かけ‐よろい【挂甲】‥ヨロヒ
(肩にかけて着る甲の意)甲の一種。5世紀頃、朝鮮から渡来。鉄板の小札こざねを革紐や組糸でつづり合わせたもので武具として用いた。のち唐制をうけ、裲襠りょうとうに似て布帛ふはくで作り、時に金銅を用い、儀礼用となり、甲としての実用性は失われた。けいこう。うちかけよろい。
挂甲
かけ‐ら【欠片】
物の欠けた片。断片。また、ごくわずかな量のたとえにもいう。「誠意の―もない」
⇒かけら‐かんつう【欠片かんつう】
かけら・う【翔らふ】カケラフ
〔自四〕
(カケルに接尾語フの付いた語)空をずうっと飛ぶ。万葉集16「面白みわれを思へかさ野つ鳥来鳴き―・ふ」
かけら‐かんつう【欠片かんつう】
「かけら」を強めていう語。きわめてわずかのもの。
⇒かけ‐ら【欠片】
かけり【翔り】
①能・狂言の囃子事はやしごと。おもに武人の霊や物狂いの心の動揺を表現する動きに用いる。
②歌舞伎の囃子。狂人の出、また深山や海岸の場の幕切れなどに用いる。
③連歌・俳諧で、一句の構想・表現にはたらきのあること。
かげり【翳り】
かげること。かげ。陰翳いんえい。比喩的に、好ましくない徴候。「表情に―がある」「景気の―」
かげ‐りゅう【陰流】‥リウ
室町時代に愛洲惟孝あいすいこうの創始した剣術の一派。のち上泉かみいずみ秀綱らに伝わる。愛洲陰流。かげのりゅう。
か・ける【欠ける・闕ける】
〔自下一〕[文]か・く(下二)
①一部分こわれる。損じる。なくなる。徒然草「とかくすれば、頸のまはり―・けて血垂り」。「茶碗のふちが―・ける」「一人―・け二人―・け皆去った」
②あるべきものが無い。万葉集13「千歳に―・くる事なく万代にあり通はむと」。平家物語1「七珍万宝一つとして―・けたる事なし」。「常識に―・ける」
③満月から月が小さくなって行く。徒然草「月満ちては―・け、物盛りにしては衰ふ」
か・ける【架ける】
〔他下一〕
⇒かける(掛ける)➍
か・ける【掛ける・懸ける】
〔他下一〕[文]か・く(下二)
事物の一部分を何かに固定してつながらせ全体の重みをそこにゆだねる、また、全体の動きを制約する意。
➊ある物・場所などに事物の一部をささえとめる。
①物につけてぶらさげる。つりさげる。古事記下「真杭には真玉を―・け」。「軒先に簾すだれを―・ける」「博識を鼻に―・ける」
②重みをあずける。ものの端の部分などを他の物の上にのせたり、側面にもたせかけたりする。宇津保物語国譲下「脇息に尻―・けてかき抱き上げ給へば」。徒然草「枝を肩に―・けて…二棟の御所の高欄に寄せ―・く」。「腰を―・ける」
③すべてを託する。手にゆだねる。竹取物語「さりともつひに男あはせざらむやはと思ひて頼みを―・けたり」。「医者に―・ける」「神仏に願を―・ける」
④離れたり動いたりしないように固定する。鍵や錠などでとめる。宇津保物語蔵開上「世になくいかめしき錠―・けたり」。狭衣物語2「妻戸あららかに―・けつる音すれば」。「ボタンを―・ける」「杭に手綱を―・ける」
⑤船を泊める。碇泊させる。日葡辞書「ミナトニフネヲカクル」
⑥竿秤さおばかりにぶらさげる。目方をはかる。宇津保物語国譲下「かの箱なりし物を―・けて侍りしかば、三千両こそ侍りしか」。古今和歌集六帖5「―・けつれば千々の黄金も数知りぬなぞ我が恋の逢ふはかりなき」
⑦上にあげる。高く掲げる。土佐日記「風よければ檝取かじとりいたく誇りて、舟に帆―・けよなど喜ぶ」。平家物語12「その首を獄門に―・けらる」。「看板を―・ける」
⑧問題として取り上げる。議題にする。「会議に―・ける」「裁判に―・ける」
⑨(鍋などを上からつるして火にあてたところから)火の上に置く。「釜を火に―・ける」
➋事物を曲がった物・とがった物・張った物・仕組んだ物などでとらえる。
①物にひっかけて離れないようにする。止める。万葉集10「天の海に月の船浮け桂楫かつらかじ―・けて漕ぐ見ゆ」。宇津保物語吹上上「牛どもに犂からすき―・けつつ」。新古今和歌集釈教「南無阿弥陀仏の御手に―・くる糸のをはりみだれぬ心ともがな」。平家物語11「御ぐしを熊手に―・けて引きあげ奉る」
②鳥などを網でとらえる。日葡辞書「トリヲカクル」
③仕組んでおとしいれる。だます。古今和歌集六帖5「今来むといひしばかりに―・けられて人のつらさの数は知りにき」。「罠わなに―・ける」「ペテンに―・ける」
④手をくだして処分する。また、手ずから扱う。平家物語9「直実が手に―・け参らせて後の御孝養をこそ仕り候はめ」。「手塩に―・けて育てる」
⑤見せる。「お目に―・ける」
➌事物を他におおいかぶせる。ふりむける。
①かぶせる。おおう。源氏物語夕霧「わけゆかむ草葉の露をかごとにてなほ濡れ衣を―・けむとや思ふ」。「布団を―・ける」「メッキを―・ける」
②撒まきそそぐ。あびせる。後拾遺和歌集哀傷「ゆかしさに包めど余る涙かな―・けじと思ふ旅の衣に」。日葡辞書「ミヅヲカクル」。「塩を―・ける」
③恩恵・情愛などを他に及ぼす。また、目下の者に祝儀などを与える。源氏物語柏木「なげのあはれをも―・け給はむ人のあらむにこそは、一つ思ひに燃えぬるしるしにはせめ」。貞丈雑記16「蜷川記に云、勧進能などに、申楽に花を―・け候時」
④迷惑・損害などをこうむらせる。源氏物語蜻蛉「女郎花乱るる野辺にまじるとも露のあだ名をわれに―・けめや」。日葡辞書「ハヂヲカクル」。浄瑠璃、曾根崎「いづれも御苦労―・けました」。「留守にして家族に不自由を―・ける」
⑤費用・労力などを負担させる。課する。また、費やす。「重い税を―・ける」「金を―・けて建てた家」「三日―・けて行く」
⑥日掛・月掛・年掛などの金を出す。「保険を―・ける」
➍(「架ける」とも書く)事物をある所から他の所までわたす。
①両端をもたせかける。わたす。拾遺和歌集恋「なかなかにいひは放たで信濃なる木曾路の橋の―・けたるやなぞ」
②糸・縄などをかけわたす。張る。雄略紀「猪名部の工匠たくみ―・けし墨縄」。日葡辞書「ユミニツルヲカクル」
③縄・ひもなどを他の物のまわりに渡す。宇津保物語国譲下「たすき―・けていとをかしく肥えてはひありき給ふ」。平家物語12「蔵人の頸に縄を―・けてからめ」
④張りめぐらしたり組み立てたりしてつくる。設ける。設置する。古今和歌集秋「山がはに風の―・けたるしがらみは」。日葡辞書「コヤヲカクル」。曠野「うで首に蜂の巣―・くる二王かな」(松芳)。「巣を―・ける」
⑤(芝居小屋を仮設することから)芝居や映画を上演・上映する。
⑥兼ねる。かけもつ。伊勢物語「国の守斎宮のかみ―・けたる」
⑦水を引く。玉塵抄16「渠みぞが多くて民田に―・けて利が多くできたぞ」
⑧ある語を文脈上別の語に続ける。「副詞を動詞に―・ける」
⑨ある場所(時間)から他の場所(時間)にまで及ぼす。宇津保物語楼上下「寝殿と西の対と渡殿、北の廊―・けて居並みたり」。蜻蛉日記上「みな月ばかり―・けて雨いたう降りたるに」。「東京から横浜に―・けて」「春から夏に―・けて」
⑩罫けいを引く。源氏物語鈴虫「罫け―・けたる金の筋よりも、墨つきの、上に輝く様なども」
⑪その数に入れる。あわせ加える。浄瑠璃、丹波与作待夜の小室節「お供―・けて三人ぢや」
➎他にむけてある動作・作用を及ぼす。
①ある作用を相手に向ける。施す。宇津保物語俊蔭「日本国まで送り奉るべき人を候はせむとのたまひていささかなる法をつくり―・けつ」。平家物語7「侍どもに矢一つ射―・け候はん」。徒然草「あやまちすな。心して降りよと言葉を―・け侍りしを」。「知らない人から声を―・けられる」「電話を―・ける」「催眠術を―・ける」「夜襲を―・ける」
②言葉に出して言う。言及する。万葉集5「―・けまくはあやにかしこし」
③ある語に他の意味をあわせ持たせる。掛け詞を用いる。「春に張るを―・ける」
④(「目を―・ける」の形で)気をつけて見る。また、(好意をもって)見守る。平家物語11「物の具のよき武者をば判官かと目を―・けてはせまはる」。「末長く目を―・けてやって下さい」
⑤ある事柄をとり上げる。浮世床初「そこに―・けちやア白黒しらくらなし」。「品質に―・けては他にひけをとらない」
⑥交配させる。「スピッツにテリアを―・ける」
⑦道具・機械などにその作用を行わせる。日葡辞書「イタナドニカンナヲカクル」。「アイロンを―・ける」「ふるいに―・ける」「エンジンを―・ける」
➏ある事物に対して心をむける。
①思う。慕う。万葉集20「畏きや天の帝を―・けつればねのみし泣かゆ朝夕よいにして」。古今和歌集恋「千早ぶる加茂の社のゆふだすき一日も君を―・けぬ日はなし」
②目標にする。万葉集6「阿波の山―・けて漕ぐ船泊り知らずも」
➐ある事柄に他の事柄を関係させる。
①引合いに出す。馬内侍集「逢ふことを今日とな―・けそ鵲のはし聞くだにもゆゆしきものを」。「私の名誉に―・けて嘘はつかない」「神仏に―・けて誓う」
②(「賭ける」とも書く)
㋐負けた者が勝った者に金品を払うことをあらかじめ約束して勝負を行う。賭け事をする。宇津保物語初秋「此の御文御許なると、兼雅が許なると比べむに、まづ物―・け給へ。…何を―・くべからむ」
㋑強い決意を示すために、失敗した時に失う物として最も大事な物を引合いに出す。源氏物語夕顔「命を―・けて何の契にかかるめをみるらむ」。「交渉成立に首を―・ける」
③即金でなく後から代金をもらう約束で物を売る。かけ売にする。醒睡笑「やがて返弁に及びなん、此の度は―・けられよ」
➑ある物の上に他を加える。
①正当な値段以上のものを加える。かけねをする。「原価に五割―・けて売る」
②掛け算をする。「5を―・ける」
➒(他の動詞の連用形に付いて)物事を始めた情況にあるの意を表す。
①…しそうになる。…し始める。好色一代女3「しどけなく帯とき―・けて、もやもやの風情を見せければ」。猿蓑「渡り―・けて藻の花のぞく流れかな」(凡兆)。「日も暮れ―・ける」
②…し始めてその途中である。「読み―・けた本」
か・ける【駆ける・駈ける】
〔自下一〕[文]か・く(下二)
①馬に乗って走る。平家物語9「木曾さらばとて、粟津の松原へぞ―・け給ふ」
②はやく走る。疾走する。「後ろから―・けて来た者がある」
③進む。進撃する。太平記6「―・くるも引くも折によるとは」
か・ける【賭ける】
〔他下一〕
⇒かける(掛ける)➐2
かけ・る【駆ける・翔る】
〔自五〕
①疾走する。奔走する。源氏物語藤袴「苦しきままに―・りありきて」
②(「翔る」と書く)鳥などが空高く飛ぶ。古事記下「ひばりは天に―・る」
かげ・る【陰る・翳る】
〔自五〕
①日や月の光が雲にさえぎられて弱まる。曇る。
②日ざしが夕方になって弱まる。薄暮となる。
③表情が暗くなる。勢いが衰える。「景気が―・る」
かけろ
鶏の鳴き声。こけっこう。神楽歌、酒殿「にはとりは―と鳴きぬなり。起きよ起きよ」
かげろい【陽炎】カゲロヒ
⇒かげろう
かげろう【陽炎】カゲロフ
春のうららかな日に、野原などにちらちらと立ちのぼる気。日射のために熱くなった空気で光が不規則に屈折されて起こるもの。いとゆう。はかないもの、ほのかなもの、あるかなきかに見えるもの、などを形容するのにも用いる。その際「蜉蝣かげろう」2を意味することもある。〈[季]春〉。古今和歌集恋「―のそれかあらぬか春雨のふる日となれば」
⇒陽炎稲妻水の月
かげろう【蜉蝣・蜻蛉】カゲロフ
(飛ぶさまが陽炎かげろうのひらめくように見えるからいう)
①トンボの古名。源氏物語蜻蛉「―の物はかなげに飛びちがふを」
②カゲロウ目の昆虫の総称。体も翅も弱々しく、2本または3本の長い尾毛がある。夏、水辺を飛び、交尾・産卵を終えれば、数時間で死ぬ。幼虫は2〜3年を経て成虫に羽化。はかないもののたとえに用いる。かぎろう。青蚨せいふ。朝顔。蜏ひおむし。ふゆう。〈[季]秋〉。徒然草「―の夕を待ち、夏の蝉の春秋を知らぬ」
ふたばかげろう
モンカゲロウ
撮影:海野和男
⇒かげろう‐の‐いのち【蜉蝣の命】
かげ‐ろう【陰郎】‥ラウ
(→)陰間かげまに同じ。
かげろ・う【影ろふ・陰ろふ】カゲロフ
〔自四〕
(カゲルに接尾語フの付いた語)
①光がほのめく。かげがうつる。金葉和歌集雑「かげろふの―・ふ程の世をすごすらむ」
②姿などがちらつく。保元物語「只今の御姿幻に―・へば」
③光が隠れて陰になる。かげる。新古今和歌集夏「よられつる野もせの草の―・ひて」



かけ‐や・る【掛け破る】🔗⭐🔉
かけ‐や・る【掛け破る】
〔他四〕
物にひっかけてやぶる。枕草子144「狩衣は―・りなどして」
か・ける【掛ける・懸ける】🔗⭐🔉
か・ける【掛ける・懸ける】
〔他下一〕[文]か・く(下二)
事物の一部分を何かに固定してつながらせ全体の重みをそこにゆだねる、また、全体の動きを制約する意。
➊ある物・場所などに事物の一部をささえとめる。
①物につけてぶらさげる。つりさげる。古事記下「真杭には真玉を―・け」。「軒先に簾すだれを―・ける」「博識を鼻に―・ける」
②重みをあずける。ものの端の部分などを他の物の上にのせたり、側面にもたせかけたりする。宇津保物語国譲下「脇息に尻―・けてかき抱き上げ給へば」。徒然草「枝を肩に―・けて…二棟の御所の高欄に寄せ―・く」。「腰を―・ける」
③すべてを託する。手にゆだねる。竹取物語「さりともつひに男あはせざらむやはと思ひて頼みを―・けたり」。「医者に―・ける」「神仏に願を―・ける」
④離れたり動いたりしないように固定する。鍵や錠などでとめる。宇津保物語蔵開上「世になくいかめしき錠―・けたり」。狭衣物語2「妻戸あららかに―・けつる音すれば」。「ボタンを―・ける」「杭に手綱を―・ける」
⑤船を泊める。碇泊させる。日葡辞書「ミナトニフネヲカクル」
⑥竿秤さおばかりにぶらさげる。目方をはかる。宇津保物語国譲下「かの箱なりし物を―・けて侍りしかば、三千両こそ侍りしか」。古今和歌集六帖5「―・けつれば千々の黄金も数知りぬなぞ我が恋の逢ふはかりなき」
⑦上にあげる。高く掲げる。土佐日記「風よければ檝取かじとりいたく誇りて、舟に帆―・けよなど喜ぶ」。平家物語12「その首を獄門に―・けらる」。「看板を―・ける」
⑧問題として取り上げる。議題にする。「会議に―・ける」「裁判に―・ける」
⑨(鍋などを上からつるして火にあてたところから)火の上に置く。「釜を火に―・ける」
➋事物を曲がった物・とがった物・張った物・仕組んだ物などでとらえる。
①物にひっかけて離れないようにする。止める。万葉集10「天の海に月の船浮け桂楫かつらかじ―・けて漕ぐ見ゆ」。宇津保物語吹上上「牛どもに犂からすき―・けつつ」。新古今和歌集釈教「南無阿弥陀仏の御手に―・くる糸のをはりみだれぬ心ともがな」。平家物語11「御ぐしを熊手に―・けて引きあげ奉る」
②鳥などを網でとらえる。日葡辞書「トリヲカクル」
③仕組んでおとしいれる。だます。古今和歌集六帖5「今来むといひしばかりに―・けられて人のつらさの数は知りにき」。「罠わなに―・ける」「ペテンに―・ける」
④手をくだして処分する。また、手ずから扱う。平家物語9「直実が手に―・け参らせて後の御孝養をこそ仕り候はめ」。「手塩に―・けて育てる」
⑤見せる。「お目に―・ける」
➌事物を他におおいかぶせる。ふりむける。
①かぶせる。おおう。源氏物語夕霧「わけゆかむ草葉の露をかごとにてなほ濡れ衣を―・けむとや思ふ」。「布団を―・ける」「メッキを―・ける」
②撒まきそそぐ。あびせる。後拾遺和歌集哀傷「ゆかしさに包めど余る涙かな―・けじと思ふ旅の衣に」。日葡辞書「ミヅヲカクル」。「塩を―・ける」
③恩恵・情愛などを他に及ぼす。また、目下の者に祝儀などを与える。源氏物語柏木「なげのあはれをも―・け給はむ人のあらむにこそは、一つ思ひに燃えぬるしるしにはせめ」。貞丈雑記16「蜷川記に云、勧進能などに、申楽に花を―・け候時」
④迷惑・損害などをこうむらせる。源氏物語蜻蛉「女郎花乱るる野辺にまじるとも露のあだ名をわれに―・けめや」。日葡辞書「ハヂヲカクル」。浄瑠璃、曾根崎「いづれも御苦労―・けました」。「留守にして家族に不自由を―・ける」
⑤費用・労力などを負担させる。課する。また、費やす。「重い税を―・ける」「金を―・けて建てた家」「三日―・けて行く」
⑥日掛・月掛・年掛などの金を出す。「保険を―・ける」
➍(「架ける」とも書く)事物をある所から他の所までわたす。
①両端をもたせかける。わたす。拾遺和歌集恋「なかなかにいひは放たで信濃なる木曾路の橋の―・けたるやなぞ」
②糸・縄などをかけわたす。張る。雄略紀「猪名部の工匠たくみ―・けし墨縄」。日葡辞書「ユミニツルヲカクル」
③縄・ひもなどを他の物のまわりに渡す。宇津保物語国譲下「たすき―・けていとをかしく肥えてはひありき給ふ」。平家物語12「蔵人の頸に縄を―・けてからめ」
④張りめぐらしたり組み立てたりしてつくる。設ける。設置する。古今和歌集秋「山がはに風の―・けたるしがらみは」。日葡辞書「コヤヲカクル」。曠野「うで首に蜂の巣―・くる二王かな」(松芳)。「巣を―・ける」
⑤(芝居小屋を仮設することから)芝居や映画を上演・上映する。
⑥兼ねる。かけもつ。伊勢物語「国の守斎宮のかみ―・けたる」
⑦水を引く。玉塵抄16「渠みぞが多くて民田に―・けて利が多くできたぞ」
⑧ある語を文脈上別の語に続ける。「副詞を動詞に―・ける」
⑨ある場所(時間)から他の場所(時間)にまで及ぼす。宇津保物語楼上下「寝殿と西の対と渡殿、北の廊―・けて居並みたり」。蜻蛉日記上「みな月ばかり―・けて雨いたう降りたるに」。「東京から横浜に―・けて」「春から夏に―・けて」
⑩罫けいを引く。源氏物語鈴虫「罫け―・けたる金の筋よりも、墨つきの、上に輝く様なども」
⑪その数に入れる。あわせ加える。浄瑠璃、丹波与作待夜の小室節「お供―・けて三人ぢや」
➎他にむけてある動作・作用を及ぼす。
①ある作用を相手に向ける。施す。宇津保物語俊蔭「日本国まで送り奉るべき人を候はせむとのたまひていささかなる法をつくり―・けつ」。平家物語7「侍どもに矢一つ射―・け候はん」。徒然草「あやまちすな。心して降りよと言葉を―・け侍りしを」。「知らない人から声を―・けられる」「電話を―・ける」「催眠術を―・ける」「夜襲を―・ける」
②言葉に出して言う。言及する。万葉集5「―・けまくはあやにかしこし」
③ある語に他の意味をあわせ持たせる。掛け詞を用いる。「春に張るを―・ける」
④(「目を―・ける」の形で)気をつけて見る。また、(好意をもって)見守る。平家物語11「物の具のよき武者をば判官かと目を―・けてはせまはる」。「末長く目を―・けてやって下さい」
⑤ある事柄をとり上げる。浮世床初「そこに―・けちやア白黒しらくらなし」。「品質に―・けては他にひけをとらない」
⑥交配させる。「スピッツにテリアを―・ける」
⑦道具・機械などにその作用を行わせる。日葡辞書「イタナドニカンナヲカクル」。「アイロンを―・ける」「ふるいに―・ける」「エンジンを―・ける」
➏ある事物に対して心をむける。
①思う。慕う。万葉集20「畏きや天の帝を―・けつればねのみし泣かゆ朝夕よいにして」。古今和歌集恋「千早ぶる加茂の社のゆふだすき一日も君を―・けぬ日はなし」
②目標にする。万葉集6「阿波の山―・けて漕ぐ船泊り知らずも」
➐ある事柄に他の事柄を関係させる。
①引合いに出す。馬内侍集「逢ふことを今日とな―・けそ鵲のはし聞くだにもゆゆしきものを」。「私の名誉に―・けて嘘はつかない」「神仏に―・けて誓う」
②(「賭ける」とも書く)
㋐負けた者が勝った者に金品を払うことをあらかじめ約束して勝負を行う。賭け事をする。宇津保物語初秋「此の御文御許なると、兼雅が許なると比べむに、まづ物―・け給へ。…何を―・くべからむ」
㋑強い決意を示すために、失敗した時に失う物として最も大事な物を引合いに出す。源氏物語夕顔「命を―・けて何の契にかかるめをみるらむ」。「交渉成立に首を―・ける」
③即金でなく後から代金をもらう約束で物を売る。かけ売にする。醒睡笑「やがて返弁に及びなん、此の度は―・けられよ」
➑ある物の上に他を加える。
①正当な値段以上のものを加える。かけねをする。「原価に五割―・けて売る」
②掛け算をする。「5を―・ける」
➒(他の動詞の連用形に付いて)物事を始めた情況にあるの意を表す。
①…しそうになる。…し始める。好色一代女3「しどけなく帯とき―・けて、もやもやの風情を見せければ」。猿蓑「渡り―・けて藻の花のぞく流れかな」(凡兆)。「日も暮れ―・ける」
②…し始めてその途中である。「読み―・けた本」
かけ‐わた・す【掛け渡す】🔗⭐🔉
かけ‐わた・す【掛け渡す】
〔他五〕
①一方から他方に渡しかける。
②一面にかける。かけ並べる。平中物語「簾―・してある人の家あり」
○影を搏つかげをうつ
[管子兵法]つかまえられないことや、なし得ないことのたとえ。
⇒かげ【影・陰・蔭・翳】
○影を畏れ迹を悪むかげをおそれあとをにくむ
[荘子漁父](自分の影と足跡におびえて逃げ走り、日陰にいれば影は消え、動かなければ足跡はつかないことがわからなかったという故事から)心静かに反省・修養することを知らず、いたずらに外物に心をわずらわされることのたとえ。
⇒かげ【影・陰・蔭・翳】
○影を落とすかげをおとす
①光を投げかける。光がさす。「満月が―」
②光をさえぎり暗い部分をつくる。「繁みが地面に―」
③以前の出来事の悪い影響がある。「戦争が今も人々の生活に―」
⇒かげ【影・陰・蔭・翳】
○影をひそめるかげをひそめる
誰にも気づかれぬよう、表立った行動をせずじっとしている。また、物事や現象が表面から消える。
⇒かげ【影・陰・蔭・翳】
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