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もの【物】🔗🔉

もの】 [一]〔名〕 ➊形のある物体をはじめとして、存在の感知できる対象。また、対象を特定の言葉で指し示さず漠然ととらえて表現するのにも用いる。 ①物体。物品。万葉集2「みどり児の乞ひ泣くごとに取り与ふる―し無ければ」。「―がなくなる」「他人の―」「時代―」 ②仏・神・鬼・魂など、霊妙な作用をもたらす存在。妖怪。邪神。物のけ。源氏物語帚木「―におそはるる心地して」。「―に憑かれる」「―詣で」 ③物事。源氏物語桐壺「―の心知り給ふ人」。源氏物語帚木「まことの―の上手」。源氏物語若紫「―のはじめ」。「―のついでに伝える」 ④世間で知られている内容。世間一般の事柄。普通の物。源氏物語初音「御簾の内の追風、なまめかしく吹き匂はして、―より殊にけだかくおぼさる」。「―を知らない」 ⑤取り立てて言うべきほどのこと。物の数。貫之集「桜よりまさる色なき春なればあだし草木を―とやは見る」。「―ともしない」「―になる」 ⑥動作・作用・心情の対象となる事柄。 ㋐言語。言葉。古事記「山城のつつきの宮に―申すあが兄の君は」。源氏物語桐壺「母君もとみにえ―ものたまはず」。「―をあまり言わない子」 ㋑飲食物。おもの。源氏物語桐壺「―などもきこしめさず、朝がれひのけしきばかり触れさせ給ひて」 ㋒着物。衣服。源氏物語若紫「―縫ひ営むけはひなど」 ㋓楽器。源氏物語桐壺「心ことなる―の音をかき鳴らし」 ⑦それと言いにくいことを漠然と示す語。源氏物語若紫「―よりおはすれば、まづ出でむかひて」 ➋(形式名詞) ①そうあって当然のこと。徒然草「あまりに興あらんとする事は、必ずあいなき―なり」。「親には従う―だ」「悲しい時は泣く―」 ②感嘆の意。万葉集15「ほととぎす物思ふ時に鳴くべき―か」。「ばかなことをした―だ」 ③(終助詞的に)少し感情をこめて理由をのべる。「行きたいんだ―」 ➌〔哲〕(thing イギリス・Ding ドイツ) ①広義には、思考の対象としての意識的存在であれ、現実に存在する事物であれ、何らかの存在・対象・判断の主語となる一切。 ②狭義には、外界に在り、感覚によって知覚しうる事物。感性的性質の統一的担い手としての個物。時間・空間中に在る物体的・物質的なもの。 ➍〔法〕民法上、有体物。私権の客体たりうるもの。 [二]〔接頭〕 状態を表す名詞・形容詞の語頭に添えて、何とはなしにそうである、の意を表す。「―静か」「―悲しい」 ⇒物覚ゆ ⇒物が無い ⇒物がわかる ⇒物ともせず ⇒物ならず ⇒物に当たる ⇒物に掛かる ⇒物にする ⇒物になる ⇒物に似ず ⇒物には七十五度 ⇒物にもあらず ⇒物の先を折る ⇒物の上手 ⇒物は言いよう ⇒物は考えよう ⇒物は相談 ⇒物は試し ⇒物は使いよう ⇒物も言いようで角が立つ ⇒物を言う ⇒物を言わす

広辞苑 ページ 19553 での単語。