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もの【物】🔗⭐🔉
もの 【物】
■一■ [2][0] (名)
〔形のある物体を初めとして,広く人間が知覚し思考し得る対象の一切を意味する。「こと(事)」が時間的に生起・消滅する現象を表すのに対して,「もの」はその現象を担う不変な実体を想定して用いる語である〕
□一□
(1)物体。物品。「階段に―を置くのは危険だ」「窓から―が落ちて来た」
(2)特に,経済的な価値をもった物品。また,その品質。「―は乏しくても,心は豊かでありたい」「値段は安いが,―は確かだ」
(3)対象を具体的に表現せず,漠然という語。何らかの対象。「―を言う」「―を思う」「―も食べない」「―のはずみ」「―の役に立たない」
(4)対象を特定化せず,一般的・包括的にいう語。すべての対象。「―は考えようだ」「―には順序がある」
(5)物事の筋道。道理。「―が分かっている人」
(6)鬼や悪霊など,正体のとらえにくい対象を畏怖していう語。「―に憑(ツ)かれる」「―の怪(ケ)」
(7)取り上げる価値のある対象。ひとかどの存在。「―ともしない」「―の数ではない」「―になるかどうか」
(8)思考の対象として取り上げる事物をさす語。物事。「幸福という―はとかく失われやすい」「日本的な―を好む」
(9)一度名前を言ったあとで再びそれをさす時に,名前の代わりに用いる語。それ。「あの映画は一度見た―だ」
(10)(「…のもの」の形で)所有物。持ち物。「自分の―には名前を書いておきなさい」「人の―を借りる」
□二□
(1)〔哲〕
〔英 thing; (ドイツ) Ding〕
(ア)感知し得るさまざまな属性の統一的担い手としてのまとまりをもった空間的・時間的対象。狭義には,このもの・あのものと指し示し得る「机」「家」など外界に存在する感覚的個物をいうが,広義には思考の対象となり,命題の主語となり得るすべて,例えば心や価値などの非感覚的存在をも含めていう。(イ)人格としては関係しない対象を「ひと」に対して「もの」という。
(2)〔法〕 権利の客体とされる,排他的支配が可能な外界の一部をいい,有体物と無体物とに分けられる。民法上「物」は有体物に限られる。
□三□種々の語の下に付いて複合語をつくる。
(1)その分野・種類に入る品物や作品であることを表す。「夏―」「西陣―」「三年―のワイン」「現代―」
(2)そういう事態を引き起こすような事柄であることを表す。「それは切腹―だ」「全く冷や汗―だった」
(3)動詞の連用形に付いて,そのような動作の結果できた物品,そのような動作の対象となる物品であることを表す。「塗り―」「焼き―」「食べ―」「読み―」
□四□(形式名詞)
(1)(「…ものだ(である)」などの形で)(ア)普遍的な傾向。「どんな人もお世辞には弱い―だ」「人間はとかく過去を美化したがる―らしい」(イ)なすべきこと。「そんな時は何も聞かずにいてあげる―だ」(ウ)過去にしばしば起こったこと。「二人でよく遊んだ―だ」
(2)(「…ものだ」の形で)感動・詠嘆を表す。…なあ。「あの難関をよくくぐり抜けた―だ」「故郷とはいい―だ」「あの男にも困った―だ」
(3)(「…ものか」「…ものではない」などの形で)否定を強調する。「そんなことがある―か」「誰が言う―ですか」「何をするかわかった―ではない」
(4)(「…ものと思われる」などの形で)判断を強調する。「彼はもう帰った―と思われる」「あきらめた―とみえて,その後何も言ってこない」
(5)(「ものとする」の形で)…することとする。「甲はその責任を負う―とする(契約書ナドノ文言)」
■二■ (接頭)
形容詞・形容動詞・動詞に付いて,何とはなしに,また,どことなくそのような状態である,の意を表す。「―寂しい」「―静か」「―古る」
もの【者】🔗⭐🔉
もの [2] 【者】
〔「もの(物)」と同源〕
人。古来,単独で用いられることはごくまれで,多く連体修飾語を伴って用いられる。「家の―を迎えにやる」「若い―」「おまえのような―は勘当だ」「だれか試してみる―はいないか」「―は極(イミジ)き臆病の―よ/今昔 28」
〔「人」に比べて卑下したり軽視したりするような場合に用いられることが多い〕
モノ
mono
🔗⭐🔉
モノ [1]
mono
ギリシャ語で,単一の意。「―クローム」


もの🔗⭐🔉
もの
〔形式名詞「もの」から〕
■一■ (終助)
活用語の終止形に付く。
(1)不満・うらみ・あまえ・訴えなどの気持ちを込めて,理由を述べる。「だもの・ですもの」の形をとることが多い。「だって,仕方がないんです―」「どうしてもぼく行きたい―」
(2)(「ものね」「ものな」などの形で)理由を表す。「ね」「な」などによって,軽い詠嘆の意が加わる。「なるほど,それはきみの専門だ―な」「よくおわかりでしょう。前に行ったことがあります―ね」
■二■ (接助)
活用語の終止形に付く。
(1)理由・原因を述べる。から。ので。「子供だ―,無理はないよ」「いっしょうけんめい勉強しています―,大丈夫ですわ」
(2)逆接条件を表す。のに。「ぼくだって知らない―,きみが知っているはずがない」
〔「もの(物)」の形式名詞的用法の一つとして,活用語の連体形を受けて文を終止し,感動の気持ちを表すということはすでに上代からあり,これから終助詞的用法が生まれたのであるが,それは近世以降のことである〕
もの-あい【物間】🔗⭐🔉
もの-あい ―アヒ 【物間】
物と物との間。また,その間の距離。「互ひにそれと見しよりも,―近くなりしかば/狂言・文蔵」
もの-あざやか【物鮮やか】🔗⭐🔉
もの-あざやか [4] 【物鮮やか】 (形動)[文]ナリ
きわだってあざやかなさま。「―な色どり」
もの-あたらし・い【物新しい】🔗⭐🔉
もの-あたらし・い [6] 【物新しい】 (形)[文]シク ものあたら・し
なんとなく新しい。
ものあら-がい【物洗貝】🔗⭐🔉
ものあら-がい ―ガヒ [4] 【物洗貝】
淡水産の巻貝。殻高約25ミリメートルの長卵形で,殻は非常に薄く半透明で,淡黄褐色。生きている時は肉が透けて見えるので,暗褐色。殻口がきわめて広い。池沼・水田にすみ水草などについている。肝吸虫の中間宿主。日本各地と朝鮮半島に分布。
もの-あらそい【物争い】🔗⭐🔉
もの-あらそい ―アラソヒ [3] 【物争い】 (名)スル
物事を争うこと。けんか。紛争。ものあらがい。「―の種になる」
もの-あわせ【物合(わ)せ】🔗⭐🔉
もの-あわせ ―アハセ [3] 【物合(わ)せ】
左右に分かれ物事を比べ合わせて優劣を競う遊戯の総称。歌合わせ・絵合わせなど。
もの-あわれ【物哀れ】🔗⭐🔉
もの-あわれ ―アハレ [3] 【物哀れ】 (名・形動)[文]ナリ
なんとなくあわれを感じる・こと(さま)。「―な季節」「はるけき野辺を分け入り給ふより,いと―なり/源氏(賢木)」
もの-あんじ【物案じ】🔗⭐🔉
もの-あんじ [3] 【物案じ】 (名)スル
物事を心配すること。思案。「首を傾げて―をしてゐる/俳諧師(虚子)」
もの-いい【物言い】🔗⭐🔉
もの-いい ―イヒ [3] 【物言い】
(1)言葉遣い。物の言い方。「気にさわる―」
(2)言い争い。口論。口喧嘩(ゲンカ)。「―の種になる」
(3)決定について反対が出ること。特に相撲で,行司の勝負の判定に対して,審判委員や控え力士が異議を出すこと。「計画に対して―をつける」「結びの一番に―がつく」
(4)うわさ。「人の―さがなさよ/源氏(帚木)」
(5)よく議論をすること。また,その人。論客。おしゃべり。「かの―の内侍は,え聞かざるべし/紫式部日記」
もの-い・う【物言う】🔗⭐🔉
もの-い・う ―イフ [2] 【物言う】 (動ワ五[ハ四])
(1)ことばを発する。口をきく。「―・いたげなそぶり」
(2)力を発揮する。「金が―・う世の中」
(3)男女が情を通じる。「むかし,―・ひける女に/伊勢 32」
(4)気のきいたことばを言う。秀句を言う。「このことば,なにとにはなけれども,―・ふやうにぞきこえたる/土左」
ものい-うま【物射馬】🔗⭐🔉
ものい-うま 【物射馬】
犬追物(イヌオウモノ)・笠懸(カサガケ)・流鏑馬(ヤブサメ)などに馴れた馬。下地馬。
ものい-ぐつ【物射沓】🔗⭐🔉
ものい-ぐつ [3] 【物射沓】
騎射に用いる沓。なめし革で作り,普通,黒漆塗りで爪先に襞(ヒダ)をとる。馬上沓。
もの-いみ【物忌み】🔗⭐🔉
もの-いみ [4][0] 【物忌み】 (名)スル
(1)祭事において神を迎えるために,一定期間飲食や行為を慎み,不浄を避けて心身を清浄に保つこと。斎戒。斎忌。
(2)占いや暦が凶であるときや夢見の悪いときなどに,家にこもって謹慎すること。「御―と言ひてければ,人も通はず/源氏(東屋)」
(3){(2)}のときにその標として柳の木の札や忍草などに「物忌」と書き,冠・簾に付けたもの。物忌みの札。「烏帽子に―つけたるは/枕草子 33」
(4)昔,伊勢神宮をはじめ賀茂・春日・鹿島・香取などの諸大社で,忌みこもって神事にあたった童女・童男。
(5)不吉であるとして物事を忌み避けること。「武将の身として,夢見・―など余りにおめたり/保元(上・古活字本)」
ものいみ-の-たち【物忌みの館・斎の館】🔗⭐🔉
ものいみ-の-たち 【物忌みの館・斎の館】
⇒かむだち(神館)
もの-いり【物入り】🔗⭐🔉
もの-いり [0][4] 【物入り】 (名・形動)[文]ナリ
費用がかかる・こと(さま)。出費。「四月は何かと―が多い」「―な事が続く」
もの-いれ【物入れ】🔗⭐🔉
もの-いれ [4][0] 【物入れ】
物を入れておく納戸や箱,袋。また,ポケット。
もの-う・い【物憂い】🔗⭐🔉
もの-う・い [3][0] 【物憂い】 (形)[文]ク ものう・し
(1)なんとなく気がふさいで,動くのも面倒だ。憂鬱(ユウウツ)だ。けだるい。大儀だ。「何事をするにも―・い億劫(オツクウ)な気分になり/
風(潤一郎)」
(2)なんとなくつらい。苦しい。「さのみ野山に臥さん事も―・くて/保元(下)」
[派生] ――げ(形動)――さ(名)

もの-うち【物打ち】🔗⭐🔉
もの-うち [0][4] 【物打ち】
太刀などで物を打ち切るとき,その物に触れる部分。刀の先端10センチメートルほどの,最もよく切れる部分。切っ先三寸。
もの-うと・し【物疎し】🔗⭐🔉
もの-うと・し 【物疎し】 (形ク)
なんとなく親しみにくい。「もし賢女あらば,それも―・く/徒然 107」
もの-うらめ・し【物恨めし】🔗⭐🔉
もの-うらめ・し 【物恨めし】 (形シク)
なんとなくうらめしい。「中頃―・しう思したる気色の/源氏(幻)」
もの-うり【物売り】🔗⭐🔉
もの-うり [3][4] 【物売り】
店を構えず露天で,または持ち歩いて品物を売ること。また,その人。「―の声がする」
もの-うんじ【物倦じ】🔗⭐🔉
もの-うんじ 【物倦じ】
気がふさいでいやになること。「はかなき―をして/源氏(蛍)」
もの-えんじ【物怨じ】🔗⭐🔉
もの-えんじ ―
ンジ 【物怨じ】
嫉妬(シツト)。やきもち。「―をいたくし侍りしかば,心づきなく/源氏(帚木)」

モノー
Jacques Lucien Monod
🔗⭐🔉
モノー
Jacques Lucien Monod
(1910-1976) フランスの分子生物学者。ジャコブ(F. Jacob (1920- ))とともに,タンパク質合成の遺伝的制御機構を説明するオペロン説を提唱。酵素のアロステリック効果による,多様な物質交代経路での統合・調節についても論じた。著「偶然と必然」


もの-おき【物置】🔗⭐🔉
もの-おき [3][4] 【物置】
当面使わない物や雑具などを入れて置く場所。「―小屋」
もの-おじ【物怖じ】🔗⭐🔉
もの-おじ ―オヂ [0] 【物怖じ】 (名)スル
臆病(オクビヨウ)で,何かにつけてこわがること。「―しない態度」
もの-おしみ【物惜しみ】🔗⭐🔉
もの-おしみ ―ヲシミ [3] 【物惜しみ】 (名)スル
人に物を与えたり物が減ったりするのを惜しがること。けち。「―して使わずにしまっておく」
もの-おそろし・い【物恐ろしい】🔗⭐🔉
もの-おそろし・い [6] 【物恐ろしい】 (形)[文]シク ものおそろ・し
なんとなく恐ろしい。「なんとも―・い気配」
[派生] ――げ(形動)――さ(名)
もの-おと【物音】🔗⭐🔉
もの-おと [3][4] 【物音】
何かの音。おと。「―で目を覚ます」
もの-おどろき【物驚き】🔗⭐🔉
もの-おどろき [3] 【物驚き】
物事に驚くこと。「何だつてさう気が小さくつて,―をするんだなあ/化銀杏(鏡花)」
もの-おぼえ【物覚え】🔗⭐🔉
もの-おぼえ [3] 【物覚え】
物事をよくわかって忘れないこと。「―がよい」
もの-おぼ・ゆ【物覚ゆ】🔗⭐🔉
もの-おぼ・ゆ 【物覚ゆ】 (動ヤ下二)
(1)心が確かである。正気である。「いとかなしかりけるとて泣くを見るに―・えずなりて/蜻蛉(上)」
(2)物心がつく。「―・えてのち,さることをこそまだ見侍らね/大鏡(藤氏物語)」
もの-おもい【物思い】🔗⭐🔉
もの-おもい ―オモヒ [3] 【物思い】
あれこれと思い悩むこと。憂え思うこと。「―に沈む」
もの-おも・う【物思う】🔗⭐🔉
もの-おも・う ―オモフ [4] 【物思う】 (動ワ五[ハ四])
あれこれと物思いにふける。「―・う年頃」
もの-おもわし・い【物思わしい】🔗⭐🔉
もの-おもわし・い ―オモハシイ [6] 【物思わしい】 (形)[文]シク ものおもは・し
気がかりなことがあってなんとなく心が晴れない。物思いをするさまである。「―・い顔をして歯を鑿(セセ)つてゐる/二人女房(紅葉)」
[派生] ――げ(形動)――さ(名)
ものか🔗⭐🔉
ものか (終助)
〔連語「ものか」が一語化して,終助詞として用いられるようになったもの。話し言葉でのくだけた言い方では「もんか」ともなる〕
文末に用いて,活用語の連体形に付く。反語の意を表す。強く反問し,きっぱり否定する気持ちを表す。「そんなこと知る―」「ばかにされて,だまっていられる―」
〔丁寧な言い方としては「ものですか」の形が用いられる。これは,同等あるいは目下の者に対する場合には,やや見下した言い方にもなる。「あなたなどに負けてたまるものですか」〕
→ものか(連語)
もの-か🔗⭐🔉
もの-か (連語)
〔形式名詞「もの」に係助詞「か」の付いたもの〕
文末に用いられる。
(1)強い驚きや感動の意を表す。「心なき鳥にぞありけるほととぎす物思ふ時に鳴くべき―/万葉 3784」「乳をひねり給へりければ,御顔にささと走りかかる―/大鏡(兼家)」
(2)強い反語の意を表す。「はじめより長く言ひつつ頼めずはかかる思ひにあはまし―/万葉 620」「人ばなれたる所に心とけていぬる―/源氏(夕顔)」「かかる所にて御牛をばおふ―/徒然 114」
〔(1)の用法は中古までで,のちには(2)の用法中心に用いられ,終助詞化していった〕
→ものか(終助)
もの-かい【物買い】🔗⭐🔉
もの-かい ―カヒ [4][0] 【物買い】
物を買うこと。また,その人。
モノカイン
monokine
🔗⭐🔉
モノカイン [3]
monokine
マクロファージが産生する,高分子物質の総称。多くはタンパク質。免疫反応に関係する。


もの-かき【物書き】🔗⭐🔉
もの-かき [4][3] 【物書き】
(1)文章を書くこと。また,文章を書くことで生活している人。
(2)文書・記録などを書く役。書き役。「申状を―にあつらへて,かかせる程に/名語記」
もの-かげ【物陰】🔗⭐🔉
もの-かげ [0] 【物陰】
物のかげ。物にかくれて見えない所。「―に身を隠す」「―から急に飛び出す」
もの-かげ【物影】🔗⭐🔉
もの-かげ [0] 【物影】
何かの物の姿。物の形。「―が動く」
もの-がしら【物頭】🔗⭐🔉
もの-がしら [3] 【物頭】
(1)もののかしら。武家の家老,町方・村方の庄屋・名主など。
(2)武家時代,弓組・鉄砲組などの足軽の頭。組頭。足軽頭。
(3)能で頭に戴くもの。かぶり物。
もの-かず【物数】🔗⭐🔉
もの-かず [3] 【物数】
(1)品物の合計数。品数。
(2)口数。「―いはぬこそよけれ/浮世草子・一代女 1」
(3)とりたてて数え立てるほど重要なこと。「―にして言ふにはあらねど/読本・八犬伝 4」
(4)多数。「折々の御猟でござるによつて,さぞお―(=多数ノ獲物)でござらうと/狂言・靭猿(鷺流)」
もの-がた・い【物堅い】🔗⭐🔉
もの-がた・い [4] 【物堅い】 (形)[文]ク ものがた・し
実直である。律義である。まじめ一方である。「―・く信用できる人」
[派生] ――さ(名)
もの-がたら・う【物語らふ】🔗⭐🔉
もの-がたら・う ―ガタラフ 【物語らふ】 (動ハ四)
語り合う。特に男女が情を交わす。「かのまめ男,うち―・ひて,帰り来て,いかが思ひけむ/伊勢 2」
もの-がたり【物語】🔗⭐🔉
もの-がたり [3] 【物語】 (名)スル
(1)あるまとまった内容のことを話すこと。ものがたること。また,その内容。話。談話。「世にも悲しい―」「知る人の許にて夜に入るまで―し/舞姫(鴎外)」
(2)文学形態の一。広義には,散文による創作文学のうち,自照文学を除くものの総称。すなわち,作者が人物・事件などについて他人に語る形で記述した散文の文学作品。特に,人物描写に主眼のある小説に対して,事件の叙述を主とするものをさすことが多い。狭義には,日本の古典文学で,「竹取物語」「伊勢物語」に始まり,「宇津保物語」「源氏物語」で頂点に達し,鎌倉時代の擬古物語に至るまでのものをさす。歴史物語・説話物語・軍記物語を含めることもある。
(3)浄瑠璃・歌舞伎の演出・演技の一形式。登場人物が過去の事件や心境を身振りを交えて物語る場面。「熊谷陣屋」の熊谷など。
(4)男女が相語らうこと。情を交わすこと。「夜すがら―せしを/浮世草子・一代女 2」
ものがたり-あわせ【物語合(わ)せ】🔗⭐🔉
ものがたり-あわせ ―アハセ [6] 【物語合(わ)せ】
平安時代,何人かの人が左右に分かれ,珍しい物語の書に,歌などを添えて出し,優劣を競う遊び。
ものがたり-え【物語絵】🔗⭐🔉
ものがたり-え ―
[5] 【物語絵】
平安時代,和文の物語に絵を描き加えたもの。また,中心となる場面だけを絵画化したものもある。
→絵物語

もの-がた・る【物語る】🔗⭐🔉
もの-がた・る [4] 【物語る】 (動ラ五[四])
(1)あるまとまった話をする。まとまりのある内容を話す。「昔のことを―・る」
(2)ある事実がある意味を示す。表す。「苦労を―・る顔のしわ」
(3)語る。話をかわす。「男が…他の船員と何事か―・りつつあつた/馬上の友(独歩)」
[可能] ものがたれる
もの-かな🔗⭐🔉
もの-かな (連語)
〔形式名詞「もの」に終助詞「かな」の付いたもの〕
文末にあって,活用語の連体形を受け,強い感動の意を表す。…だなあ。「御手,いとをかしうのみなりまさる―/源氏(賢木)」「無下の事をも仰せらるる―/徒然 188」
もの-がなし・い【物悲しい】🔗⭐🔉
もの-がなし・い [5][0] 【物悲しい】 (形)[文]シク ものがな・し
理由もなくなんとなく悲しい。うらがなしい。「―・い秋の夕暮れ」「―・い鹿の鳴き声」
[派生] ――げ(形動)――さ(名)
ものがなし-ら【物悲しら】🔗⭐🔉
ものがなし-ら 【物悲しら】 (形動ナリ)
〔「ら」は状態を表す接尾語〕
ものがなしそうなさま。「小金門に―に思へりし我(ア)が子の刀自を/万葉 723」
もの-か-は🔗⭐🔉
もの-か-は (連語)
〔形式名詞「もの」に係助詞「か」「は」の付いたもの〕
□一□〔□二□(2)からの残存用法〕
文中にあって,係助詞「も」などを受けて,上の語の表す物事がたいしたことではないという意を表す。…ももののかずではなく。…をも問題にせず。「台風も―,出かけていった」「激しい非難も―,断固計画を実行する」
□二□文末用法。
(1)活用語の連体形に付く。(ア)強い反語の意を表す。…であろうか,いや…ではないのだ。「天の原踏みとどろかし鳴る神も思ふ仲をば離(サ)くる―/古今(恋四)」「花はさかりに,月はくまなきをのみ見る―/徒然 137」(イ)強い感動の意を表す。…であることよ。「この矢あたれと仰せらるるに同じものを中心(ナカラ)にあたる―/大鏡(道長)」
(2)助詞「は」を受け,もののかずではない,問題ではないなどの意を表す。「待つ宵のふけゆく鐘の声聞けばかへるあしたの鳥は―/平家 5」
もの-がまし・い【物がましい】🔗⭐🔉
もの-がまし・い [5] 【物がましい】 (形)[文]シク ものがま・し
おおげさである。ことごとしい。「―・ク言ウ/ヘボン(三版)」
もの-か-も🔗⭐🔉
もの-か-も (連語)
〔形式名詞「もの」に係助詞「か」「も」の付いたもの。上代語〕
文末にあって,活用語の連体形に付く。
(1)軽い疑問の気持ちをこめた詠嘆の意を表す。「天雲のそきへの極み遠けども心し行けば恋ふる―/万葉 553」「ますらをの思ひわびつつ度(タビ)まねく嘆く嘆きを負はぬ―/万葉 646」
(2)反語の意を表す。「人言の繁くしあらば君も我(アレ)も絶えむといひて逢ひし―/万葉 3110」
ものから🔗⭐🔉
ものから (接助)
〔形式名詞「もの」に名詞「から(故)」が付いたものから。上代から見られるが,上代ではまだ二語としての意識が強く,中古に至り一語の接続助詞としての用法が成立した〕
活用語の連体形に接続する。
(1)既定の事柄を条件として示し,逆接的に下に続ける。けれども。ものの。のに。「待つ人にあらぬ―初雁のけさ鳴く声のめづらしきかな/古今(秋上)」「月は有明にて光をさまれる―,影さやかに見えてなかなかをかしき曙なり/源氏(帚木)」
(2)既定の順接条件を表す。…なので。…だから。「さすがに辺土の遺風忘れざる―,殊勝に覚えらる/奥の細道」「みづからよはひを断せ給ふ―,罷事(ヤンゴト)なくて兄の皇子御位に即せ給ふ/読本・雨月(白峯)」
〔(2)は中世から見られるが,近世の擬古文では,この方が一般的となる〕
もの-がら【物柄】🔗⭐🔉
もの-がら 【物柄】
物や人などの質。「―のよきがよきなり/徒然 81」
モノカルチャー
monoculture
🔗⭐🔉
モノカルチャー [3]
monoculture
(1)一種の作物だけを栽培する農業。
(2)単一,または少数の一次産品に依存する経済構造。旧植民地の発展途上国に多くみられる。


もの-ぎ【物着】🔗⭐🔉
もの-ぎ [3] 【物着】
衣服をつけること。特に能で,演者が退場せずに後見座で装束の一部をとり替えること。
ものぎ-の-あいかた【物着の合方】🔗⭐🔉
ものぎ-の-あいかた ―アヒカタ 【物着の合方】
歌舞伎の下座音楽の一。時代狂言で,舞台上で着物を着替えたり,鎧(ヨロイ)をつける間をつなぐ合方。
もの-ぎき【物聞き】🔗⭐🔉
もの-ぎき 【物聞き】
敵陣に忍んで様子を探り聞くこと。また,その人。遠聞き。「―に出したる者ども/常山紀談」
もの-ぎせ【物着せ】🔗⭐🔉
もの-ぎせ [4][3] 【物着せ】
能で,演技者に装束を着せること。また,その人。大正時代ごろまで,これを専門とする職分があった。現在はふつう楽屋で着せる場合にいう。
ものき-ぼし【物着星】🔗⭐🔉
ものき-ぼし 【物着星】
手指の爪にできた白い斑点。女性などは衣服を得る前兆として喜んだ。爪の星。「―形身をもらふ情なさ/柳多留 23」
もの-きよ・し【物清し】🔗⭐🔉
もの-きよ・し 【物清し】 (形ク)
(1)何となく清い。「―・くすまひたり/宇治拾遺 13」
(2)何となく上品である。立派である。「―・き御なからひなり/栄花(初花)」
もの-ぎわ【物際】🔗⭐🔉
もの-ぎわ ―ギハ 【物際】
(1)まぎわ。せとぎわ。「はやりて鑓(ヤリ)を入れば,―にて精がぬけて鑓が弱き物なり/三河物語」
(2)盆・暮れなど物日の直前の多忙な時期。「若衆の手づから十露盤(ソロバン)はじき,―に魚屋呼びつけ/浮世草子・禁短気」
もの-くい【物食い】🔗⭐🔉
もの-くい ―クヒ [0] 【物食い】
〔「ものぐい」とも〕
(1)物を食うこと。食べること。「―ノ悪イ馬/ヘボン」
(2)女性と関係を結ぶこと。「―の悪いのが可惜(アツタラ)瑜(タマ)に疵(キズ)だつて/浮雲(四迷)」
もの-ぐさ【物臭・懶】🔗⭐🔉
もの-ぐさ [0] 【物臭・懶】 (名・形動)[文]ナリ
〔古くは「ものくさ」〕
(1)何かすることを面倒がること。また,そのような性質や人。また,そのさま。ぶしょう。「―な人」「―をする」
(2)「ものぐさぞうり」に同じ。
ものぐさ-ぞうり【懶草履】🔗⭐🔉
ものぐさ-ぞうり ―ザウ― 【懶草履】
足の裏の半ばまでしかない,短い草履。足半(アシナカ)。ものぐさ。「藁縄,帯にして,―の破れたるをはき/御伽草子・物臭太郎」
もの-ぐさ・い【物臭い・懶い】🔗⭐🔉
もの-ぐさ・い [4] 【物臭い・懶い】 (形)[文]ク ものぐさ・し
〔中世後期頃まで「ものくさし」と清音〕
(1)(何かをするのが)おっくうだ。面倒だ。大儀である。「何をするのも―・い」
(2)何となく怪しい。うさんくさい。「この内は―・し。捜せや捜せ/浄瑠璃・碁盤太平記」
(3)病気で体がだるい。気分がすぐれない。「―・くなりて,死ぬべき時に/仮名草子・仁勢物語」
(4)何となくくさい。どことなく嫌なにおいがする。「女君は,程ふるままに―・き部屋に臥して/落窪 1」
ものぐさたろう【物臭太郎】🔗⭐🔉
ものぐさたろう ―タラウ 【物臭太郎】
御伽草子。二巻。作者未詳。室町時代成立。信濃国の物臭太郎は無類の無精者であったが,歌才によって宮中に召された。彼は皇族の末で善光寺如来の申し子とわかり,信濃の中将にまで出世し,死後,おたがの大明神とあがめられる。民間説話を素材にした立身成功談。おたがの本地(ホンジ)。
もの-ぐら・し【物暗し】🔗⭐🔉
もの-ぐら・し 【物暗し】 (形ク)
薄暗い。「―・うなりて文字もかかれずなりにたり/枕草子(三二一・能因本)」
もの【物】(和英)🔗⭐🔉
もの【物】
(1)[物]a thing;→英和
an object (物体).→英和
(2)[物質]a substance;→英和
a matter.→英和
〜の分かった sensible.→英和
〜がいい be good;be of good quality.〜の数でない be insignificant.〜にする master;→英和
obtain (得る);→英和
succeed.→英和
〜になる[計画などが]materialize;→英和
be realized;be a success.→英和
〜にならぬ fail;→英和
come to nothing.経験が〜をいう Experience will tell.
ものいい【物言い】(和英)🔗⭐🔉
ものいい【物言い】
an objection (抗議);→英和
the way of speaking (言いかた).〜をつける raise[make]an objection.
ものいり【物入り(になる)】(和英)🔗⭐🔉
ものいり【物入り(になる)】
(mean,involve) heavy expenses.
ものいれ【物入れ】(和英)🔗⭐🔉
ものいれ【物入れ】
a container (容器);→英和
a glove compartment (車運転席の).
ものうい【物憂い】(和英)🔗⭐🔉
ものうい【物憂い】
be[feel]weary[tired,languid,depressed].物憂げに wearily;languidly.→英和
ものうり【物売り】(和英)🔗⭐🔉
ものうり【物売り】
a peddler (行商人);a hawker (呼売人).→英和
ものおき【物置】(和英)🔗⭐🔉
ものおじ【物怖じする】(和英)🔗⭐🔉
ものおじ【物怖じする】
be timid.
ものおしみ【物惜しみ】(和英)🔗⭐🔉
ものおしみ【物惜しみ】
stinginess.→英和
〜をする(しない) be stingy (generous).
ものおと【物音】(和英)🔗⭐🔉
ものおもい【物思い】(和英)🔗⭐🔉
ものおもい【物思い】
meditation;anxiety (心配).→英和
〜に沈む be lost in thought.
ものかげ【物陰】(和英)🔗⭐🔉
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