な
「な」の種類と用法
▼文頭に使われるもの
1 注意を引きつける感動詞。「
な、もう許してくれよ」→
な(感動詞)
▼文と文の間で接続詞などの一部として使われるもの
2 連語「なので」の一部。「昨日は休みです。
なので、仕事の準備はしてません」◇近年の言い方。→
なので
3 「そんな」を略したもの。「
なの、知るもんか」「
なわけ、ないだろ」◇ぞんざいな言い方。「(ん)なの」「(ん)なこと」「(ん)なわけ」などの形で使う。→
そんな
4 「それなら(ば)」を略した「なら」の一部。「
なら、仕方ないか」→
なら(接続詞)
▼文末に使われるもの
5 詠嘆や自問、質問、詰問などを表す終助詞。「きれいだ
な」「今日は晴れる
な」「帰っていいか
な」「よくもやった
な」→
な(終助詞)
6 禁止を表す終助詞。「決して見る
な」「絶対に油断する
な」「情報に踊らされる
な」→
な(終助詞)
7 ぞんざいな命令を表す終助詞。「なさい」の略。「ちょっと来
な」「もうやめ
な」→
な(終助詞)
8 形容動詞の活用語尾。連体形で文を終わらせ、感動を表す。「まあ、なんときれい
な」「そんなご無体
な」
▼文中の文節末に使われるもの
9 念押しの終助詞。「おれは
な、今度
な、見合いをするんだよ」→
な(終助詞)
▼体言の前に使われるもの
10 形容動詞や形容動詞型活用の助動詞の連体形の活用語尾。「きれい
な花」「安易
な方法」「彼も来るよう
な話だったけど」
11 形容動詞の語幹や連体詞の一部。「そん
なこと」「大き
な人」◇活用語尾とは見なされない。

10が「きれいだ」「安易だ」など、「な」を「だ」にして言い切りの形になるのに対し、11は「そんだ」「大きだ」のようには言えない。「そんな」「あんな」などは、「そんなだ」「そんなに」のように活用する形容動詞で、「同じだ」と同様に連体修飾には語幹をそのまま使う特殊な活用をする。
12 名詞や副詞の後ろに使われるもの。「…の」や「…である」を用いるところを「…な」で言うもの。本来は使われなかったものが徐々に増えている。「
△
問題
な日本語(
○
問題の/問題である

日本語)」「
△
突然
な訪問(
○
突然の訪問)」「拠出金が最大
なことが判明した(最大であることが)」→
変な「な」の付け方
13 連語「ってな」の一部。この「な」は「ような」の略。というような。「おれは知らんって
な態度は許せない」→
ってな
▼「の」の前に使われるもの
14 形容動詞・形容動詞型活用の助動詞、助動詞「だ」の連体形。「健康
なのは良いことだ」「涙が出てきそう
なの」「それでも医者
なのか」
▼接尾語「さ」や助動詞「そうだ」の前に使われるもの
15 形容詞の語幹の一部、助動詞「ない」の語幹。「少
なそうだ」「重く
なさそうだ」「分から
なそうだ」→
そうだ・
無い(形容詞)・
ない(助動詞)
「な」「の」の基本的な違い
1

状態・感情

を表すものには「な」が付き、

もの・こと

を表すものには「の」が付く。
2 「の」には、「である」の意味で、

状態・感情

を表すものに付く場合がある。(したがって、「正式
な会員/正式
の会員」など、両方の言い方が存在する)。
3 「…な○○」「…の○○」の、「…」の部分を

もの・こと

と見るときは「…の」が使われる。「自然
な変化」は変化が自然に行われる意を表すが、「自然
の変化」はこの意味のほかに、自然自体が変化する意を表すこともある。
「な」「の」の使い分け
「な」「の」の使い分けには揺れがあるが、次のような使い分けが標準になる。
▼「優秀な人」のように、主に「な」が付く
明らか・曖昧・鋭敏・カラフル・奇麗・クール・軽快・こまやか・盛ん・斬新・静か・単純・派手・卑劣・ほがらか・まじめ・優秀・ロマンチック・〜的(機械的)
▼「独身の人」のように、主に「の」が付く
厚手・永遠・覚悟・各種・金色・偶然・高齢・最高・初期・瞬間・常識・都会・デパート・独身・特定・日本・晴れ・普通・本心・緑・〜性(植物性)・〜制(旧制)
▼「正式の会員/正式な会員」のように、「の」「な」のどちらも付く
ありがち・安心・いろいろ・おざなり・格別・過度・肝心・黄色・共通・金ぴか・互角・小柄・最適・さまざま・自然・種々・上等・正式・底抜け・手近・得意・特別・ハイレベル・反対・ビジネスライク・非常識・非凡・不特定・マイペース・真っ白・ミクロ・優勢
*「〜的」には、古くは「の」が付いたが、現在では「な」の方が優勢。→
的
*「不〜」「非〜」など否定の派生語は、「合法/非合法」「健康/不健康」「適当/不適当」「完全/不完全」のように、元の語・派生語ともに「な」が付くものもある。しかし、「特定/不特定」「統一/不統一」「景気/不景気」「常識/非常識」など派生語の方にしか「な」が付かないものが多い。
*「最〜」は、「最大・最小・最速・最高・最重量・最大限・最新」など「の」が付くのが標準的。ただし、「最適」には「の」「な」のどちらも付く。
*「高齢・年配・未成年」など年齢に関する語や、「早期・初期」「瞬間・長期間」など時間を表す語には、「の」が付くのが標準的。
*色彩は、「〜色(金色・桃色・朱色・ねずみ色)」「紫・緑・漆黒・紺碧・深紅」など、「の」が付くのが優勢。ただし、「純白」「真っ〜(白・黒・赤・青)」「黄色」および俗語の「真っ黄色」などには「の」「な」のどちらも付く。
*「いろいろ」「さまざま」「種々」には「な」「の」ともに付くが、「いろいろ」「さまざま」には「な」が付き、「種々」には「の」が付くことが多い。
*擬態語は、状態を表すものなので、「な」「の」ともに付くことができる。ただし、古くは「の」が付くことが一般的で、「すべすべな肌」「ぱさぱさなリンゴ」など、「な」を付けるとやや俗な印象を与えるものも少なくない。
*外来語は、原語が形容詞であるものには「な」が付くことが多い。日本語への入り方によっては「の」も付く。
変な「な」の付け方
▼

もの・こと

を表す語に「な」を付ける
〔
×〕…科学
なイベント・学生
な考え・日本
な人
▼

もの・こと

だけでなく

状態・感情

も表す語に「な」を付ける(「の」のほうが標準的)。
〔
×または
△〕…異例
な試み・いつも薄着
な人・大人
な女になりたい・顔見知り
な社員・片思い
な関係・酒好きで辛党
な私・感激
な旨さ・個別
な判断・最高
な瞬間・賛成
な人・至福
なひととき・重症
な患者・旬
しゅんな野菜・傷心
な日々・絶対
な自信・左右対称
な図形・長身
な人・直接
な原因・低額
な商品・部長と同格
なポスト・ドキドキ
な毎日・日本式
なやり方・悲運
な死を遂げる・問題
な日本語・洋風
な建物
後ろに来る語と「な」「の」の関係
▼主に「な」を受けるもの
だけだ…「単に年が一つ下
なだけだ」
だけに…「相手が子供
なだけに対応が難しい」
ので…「まだ子供
なので理解できない」
のに…「小学生
なのによくやったなあ」
ものか(終助詞)…「彼が犯人
なものか」
もので…「まだ学生
なもので」
*原因・理由を表す場合は、「…な」が使われやすい。名詞に付く「な」は助動詞「だ」の連体形。
▼主に「の」を受けるもの
至
いたり…「若気
の至りだ」「何とも迷惑
の至りだ」
限り…「光栄
の限りだ」◇「限り」が極限の意味でない場合は、「な」も受ける。→
限り
極
きわみ…「贅沢
ぜいたくの極みだ」
*極限や傾向を表す場合は、「…の」が使われやすい。
▼意味や用法によって使いわけたり、「な」「の」の両方を受けたりするもの
あまり・上・くせに・せい・ため・つもり・はず・ようだ・わけ・わり…「至って健康
なため薬とは縁がない/健康
のために運動する」「不安
なあまり/不安
のあまり

眠れない」→
あまり・
上・
くせに・
せい・
ため・
つもり・
はず・
ようだ・
わけ・
わり